名月の魅力を語る

第1回インタビュー:宇奈月温泉100名月物語実行委員会 委員長・石田唯一氏

2015年に初開催された「第一回 全国名月サミット」、そして「日本百名月」ブランドの第一回認定地(認定登録第1号)として、自らが地域の先頭に立ち「名月」の魅力発信に取り組む、石田氏にお話を伺った。


インタビュアー:まずは、宇奈月温泉での「第一回 全国名月サミット」開催と「日本百名月」の第一回認定地への登録、おめでとうございます。

石田氏:ありがとうございます。心より嬉しく思っています。

インタビュアー:黒部市の宇奈月温泉で「全国名月サミット」を開催することになった、そもそものきっかけや経緯は何でしょうか?

石田氏:本企画スタートのきっかけは、2015年の北陸新幹線開業効果によって、宇奈月温泉にも多くの人々が訪れるようになったことです。それを機に、ますます開業効果を継続、発展させていくため、近畿日本ツーリストの方々や夜景観光コンベンション・ビューローの方々と相談していたところ、「月」を観光資源にしようという案が生まれたのです。その後、地域の一大コンテンツとするべく、観光客が少ない冬季にイベントを実施しようと実行委員会を立ち上げ、夜景観光コンベンション・ビューロー代表の丸々さんから「全国名月サミット」に合わせてイベントを一緒に作りたいと要望をいただきました。

インタビュアー:そのようなきっかけと経緯があったのですね。
ではなぜ、「宇奈月温泉」で「月」を観光資源にしようとしたのでしょうか?

石田氏:はい、宇奈月温泉はかつて桃の樹林が広がる無人の台地でした。黒部川の電源開発が始まった大正時代、この地に一大温泉地を開こうという計画が進められ、幾多の苦労を重ねて大正十二年、ようやく黒部川の7キロ上流にある黒薙から温泉を引くことに成功したのです。そして、「宇奈月温泉」という名の由来で諸説ある中のひとつとして言われている話があります。ある夜、黒部の電源開発功労者である山岡順太郎氏(日本電力、現・関西電力社長)と山田胖氏の二人が、電源開発によって生まれた温泉につかりながら、この温泉にどんな名前をつけようかと相談していました。ちょうどその夜は月が美しく山岡氏の好きな京都宇治や奈良と並ぶ名月の地にしようとの思いをこめて、元々あった「うなづき」の地名に「宇奈月」の文字をあて、「宇奈月温泉」と名付けたと言われています。私たちはその由来はもちろん、過去にも様々な月に関する観光商品などがあった事象を改めて見直すことで、「月」を観光資源として、新たなイベントを立ち上げることを決意したのです。

インタビュアー:なるほど、その新たなイベントとは何でしょうか?

石田氏:私たちはその由来を元に、日本初の試みとなるよう、「100の月に出会える町」を目指すという テーマを掲げ、「宇奈月温泉100名月物語」と名付けました。具体的には、宇奈月温泉の旅館の館内や温泉街の商店など、様々な場所に月を演出し、さらに、シンボリックとなる大きな月をひとつ創り出し、温泉街全体で多くの月が楽しめる演出をメインとするイベントです。

インタビュアー:具体的にはどのような演出を行ったのですか?

石田氏:コンテンツは、各ホテルや商店が工夫を凝らして99個の月を演出しました。例えばホテルでは、写真や切り絵とともに照明を活かし、月を詠んだ和歌を紹介したり、月の絵本、月齢カレンダーなど、月にまつわるものを展示するなど、旅館のスタッフ一人一人がアイデアを絞りながら、みんなで名月を創りました。また、商店街にも、夜になると町歩きをしながら月巡りができるよう声をかけて、協力いただきました。そして、メイン演出として、宇奈月温泉の中心にある宇奈月公園内に 日本最大級で高さ10mにも及ぶ、「巨大行灯」を制作しています。

インタビュアー:高さ10mですか!?それは、すごいですね!!

石田氏:はい、こればかりは素人では難しいため、丸々氏にご協力を仰ぎました。夜景のプロの視点から単なる行灯ではなく、行灯のデザインにも宇奈月らしさを表現しつつ、さらに光をプログラムして回転行灯のような演出が施されています。

インタビュアー:実際に見られた方の評判はいかがでしたか?

石田氏:はい、近畿日本ツーリストのツアーなどもあり、多くの観光客にご覧いただきました。みなさんはあまりの迫力と美しい光景にとても驚かれていた印象です。さらに、多くの方がカメラや携帯で必ず写真を撮る姿を見て、フォトジェニックな印象が強ければ強いほど、多くの人に拡散されていくという、現代の口コミ効果の強さを体感することもできました。

インタビュアー:素晴らしいですね。今後はこのイベントや、認定された「日本百名月」ブランドを生かしてどのように地域を盛り上げていきたいですか?

石田氏:「第一回の全国名月サミット」を宇奈月温泉で開催できたことは、本当に大きな収穫です。全国各地から名月観光に取り組む自治体や団体の方々がお越しいただき、勉強にもなりました。今後は「日本の月」の魅力発信を他に負けないよう、共に協力してブランドの魅力を発信したいと思っています。私たちとしても、「日本百名月」に認定された「宇奈月温泉の月」について、渓谷の山上にのぼる名月鑑賞ポイントの整備や情報発信に取り組み、「宇奈月温泉100名月物語」は、さらに魅力的なイベントとして磨きをかけていきます。ぜひ、注目してください。

インタビュアー:ますますのご発展をお祈りしています。
本日はありがとうございました。


宇奈月温泉の月/宇奈月温泉100名月物語の情報はこちら