広島県福山市、沼隈半島の先端に位置する鞆の浦に浮かぶ小さな無人島。漁師たちの守り神である弁財天が祀られており、県の重要文化財に指定されている。現在の弁天堂は、1644(正保元)年に、鞆奉行・荻野新右衛門によって再建され、広島県内で最も古い九層の石塔婆、弁天島塔婆は広島県重要文化財に登録されている。元は十一重だったといわれており、創建にはある武士と若者の伝説が残る。藤原正道という武士が海に落とした宝刀を、勇敢な若者が海に飛び入り見つけ出したが、鰐(ふか=サメ)に足を食いちぎられ命を落としたことをうけ、弁天島に十一重の石塔を建てて供養したといわれている。
夜にはお堂がライトアップされ幻想的な雰囲気に包まれる弁天島は、鞆の浦の中でも欠かせない景色の1つ。満月の夜は海辺に月の道が現れ、凛と輝く弁天堂との競演は息を呑むほどに美しい。弁天島では毎年5月、瀬戸内に初夏の到来を告げる風物詩「鞆の浦弁天島花火大会」を開催。弁天島から打ち上げられる花火は、江戸時代の風情を残す町並みを照らし出し、鞆の浦ならではの情緒を醸し出す。上空を照らす花火に水面に映る彩豊かな花火、そして夜空に浮かぶ月のコラボレーションは、弁天島だけでしか見ることのできない貴重な光景だ。
※催事は新型コロナウイルスの感染症の状況に応じて開催を検討。詳細は公式HPまで。
画像: 福山市経済環境局文化観光振興部観光課